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ケミトロニクス事業部 技術部 開発課 Y.T.

  • ケミトロニクス事業部
  • 技術部

2013年入社 理工学研究科化学系専攻 Y.T.

製品開発の上流から下流まで
ひとりで手がけられることの大変さと、喜び。

塗料のプロフェッショナルとして、日々研究開発に取り組んでいます。暮らしに密着した、身近だけれども奥の深い塗料の世界について話していただきます。

Q 1普段はどんなお仕事をされていますか?

いまは自動車の内装向け塗料の研究・開発を手がけています。具体例を挙げますと、ハンドル周りのラインなどに使われる光沢のあるシルバーの塗料などです。ひとつの塗料を開発するのにかかる期間は、既存の塗料から開発する場合だと数ヶ月から半年。ゼロから開発する場合は2年〜3年かかります。例えば2年かかる製品であれば、最初の3〜6ヶ月で設計・試作をつくり、その試作品をお客様に提案。その試作を元にお客様から出てきた要望を取り入れ、またサンプルを提案するという繰り返しを4〜5回ほど行います。そのような出し戻しに12ヶ月ほどかけ、OKが出ると性能がどのくらいの期間続くのかを測定するため、6ヶ月ほどの検証期間をかけるというのがおおまかな流れです。

Q 2仕事におけるやりがいはどんな点ですか?

やはり、長い期間をかけてつくった塗料が量産され世に出たときが一番感動しますね。コロナ禍になる前などは、ひとつのプロジェクトが終わると開発課の同僚と一緒に飲みに行って長かった開発期間中の苦労話に花を咲かせたりもしていました。世に出たあとにやりがいを感じることもあります。以前、当社の営業の方とレンタカーを借りたときに、この車種のこの部分の塗料はあなたが開発したものだよと教えられました。そのときも感慨深いものがありましたね。塗料を使うユーザーの声を直接聞くことはほとんどないのですが、私たちが生み出す製品は、実際に使われたときに不具合のないことが一番重要。量産されたあとに特に知らせがないことが、一番の知らせだと思っています。

Q 3この仕事のどんなところが大変ですか?

何もないゼロの段階から世の中に出るまでの、上流から下流まですべてを手がけないといけないので、その点が醍醐味でもあり、大変さでもありますね。お客様によって色々な要望があります。よく求められる要望は、本物の金属の美しい光沢感を突き詰めてほしいという要望。しかしそれに特化すれば、塗りやすさが損なわれます。一方を立てれば一方が立たないというようなことは常に起こること。すべての性能を極限まで突き詰めればよいというわけではなく、お客様の要望をバランスよく満たすことが一番難しいです。開発・研究作業はチームで行うイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、チームを組んで開発するというより1人〜2人体制で開発しているというのが実際です。

Q 4いままで一番難しかったお客様からの要望はどんなものですか?

以前、表面にキズのある素材の上から塗装して、きれいな外観にしたいという要望がありました。一般的にキズを塗料で隠すというのは相当難易度が高い。いいアイディアが浮かばず、なかなか打開策が見つからなかったのですが、あるときふとアイディアが浮かびました。表面の素材を溶かしてしまうくらいの強い溶剤を使って、キズ自体を目立たなくするという方法です。この課題がいままでで一番難しかったですかね。入社して10年ほど経って、やりたいことはできているとすごく感じます。いまは2人ほどの若手がそばについて仕事をしていますが、将来は後輩に聞かれたことは何でも答えられる頼られる存在。そんな風になっていたいですね。