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現在、国内の労働人口減少に伴い、人材不足は社会全体の深刻な課題となっている¹⁾。この課題は塗装業界においても同様であり、事業を持続するためには省工程・省人化への対応が不可欠である。同時に、省工程化は環境負荷低減の観点からも強く求められている。
当社ではこれらの課題に対し、省工程化に寄与する塗料の開発に取り組んできた。これまでに、高固形分で塗装作業性に優れるハイソリッド塗料や、低温かつ短時間で乾燥可能な速硬化塗料を上市している²⁾。これらに加え、マグネシウム素材へ直接塗装しても良好な外観が1コートで得られる塗料や、2コートに相当する光沢・輝度を合わせ持った意匠を1コートで発現する金属調塗料、さらには高耐候性・高耐久性付与によりメンテナンス頻度の低減に寄与する塗料を開発・上市し、ラインナップを拡充した。
本稿では、これらの製品の特長及び、省工程・省人化への効果について紹介する。
軽量かつ強度に優れる金属であるマグネシウム素材は、自動車やモバイル機器等の軽量化ニーズに応える素材として、今後も市場規模の拡大が期待されている³⁾。しかし、マグネシウム素材は難付着素材であることに加え、成型時に生じる素材表面の粗が大きく、平滑性を得にくいといった課題がある。そのため、従来は付着確保および素材の粗隠しをするためのプライマー層が必要で、その上に意匠層を塗布する2 コート仕様が一般的であった。
当社はこれに対し、樹脂設計の適性化とハイソリッド化により、マグネシウム素材への付着性と1 コートで素材の粗を隠す高い隠蔽性を両立した「エコネットMG」を開発した。エコネットMG は塗装コート数を減らすことで、省工程化に大きく貢献する製品である。
本製品は、主剤にアクリルポリオール、硬化剤にイソシアネートを用いた2液硬化型アクリルウレタン樹脂系をベースとしている。この樹脂系は、金属素材向けとしては比較的低温である80℃で硬化反応が進むため、乾燥工程の省エネルギー化にも貢献する製品である。
開発にあたり、難付着素材であるマグネシウム素材への付着性を確保するため、アクリルポリオールの設計因子であるガラス転移温度(Tg)、分子量、水酸基価に着目し、その適性化を行った。第1表に示す通り、水酸基価が低い領域において良好な付着性を示すことを見いだした。これは、水酸基価を低く設定し架橋密度を抑えることで、塗膜の硬化収縮による内部応力が緩和されたためと考える。
一方で、分子量は塗膜表面のレベリング性に寄与しており、低分子量であるほど平滑な塗膜形成に有利であることを確認した。これらの結果を踏まえ、低水酸基価による付着性確保と、分子量の抑制によるレベリング性向上を考慮した樹脂設計を行い、マグネシウム素材への優れた付着性を確保した。
第1表 アクリル樹脂設計および配合設計の塗膜性能への影響

| A | B | C | D | E | F | G | H | I | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 樹脂設計 | ガラス転移温度 | 低 | 中 | 高 | 中 | 中 | 中 | 中 | 中 | 中 | ||
| 水酸基価 | 大 | 大 | 大 | 中 | 小 | 小 | 小 | 小 | 小 | |||
| 分子量 | 小 | 小 | 小 | 小 | 小 | 中 | 大 | 小 | 小 | |||
| 配合設計 | 固形分 | 小 | 小 | 小 | 小 | 小 | 小 | 小 | 中 | 大 | ||
| 塗膜性能 | 付着性 | × | × | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
| レベリング性 | ○ | ○ | △ | ○ | ○ | △ | △ | ○ | ○ | |||
| 素材粗隠蔽性 | × | × | × | × | × | × | × | △ | ○ | |||
また、付着性と並んで課題となる素材表面の粗に対しては、検討の結果、樹脂の低分子量化に加え塗料乾燥時の体積収縮が少ないハイソリッド化が有効であることを確認した。さらに本開発品では、高い溶解力を持つ希釈溶剤による塗着後の流動性向上と、添加剤による素材への濡れ性改善を組み合わせることで、塗料が素材の凹部まで濡れ広がるよう設計した。この設計により、ハイソリッド化による乾燥収縮の抑制と素材に対する良好な濡れ性を両立させ、第1図に示すとおり、1 コートで素材の粗を隠蔽することを可能にした。

第1図 ハイソリッド化と流動性向上による素材の粗隠し性改善
本開発品と従来の2コート仕様について、マグネシウム素材上での塗装外観を比較した。第1写真に示すとおり、従来の2 コート仕様は素材の粗を隠蔽できているものの、プライマー層の凹凸による影響を受け、レベリング性が不十分であったため、映り込み像の鮮映性が低かった。
一方、本開発品は1 コートでありながら、素材の粗を隠蔽しつつ、レベリング性は従来品と比較して良好であった。この結果から、レベリング性を向上させつつ、2 コートから1 コートへの代替が可能となり、塗装工程の大幅な省工程化が期待できる。

第1写真 従来品とエコネットMG の塗膜外観比較
エコネットMG は、樹脂設計の適性化とハイソリッド化により、マグネシウム素材への付着性と素材粗の隠蔽を1 コートで実現した製品である。これにより、従来の2 コート工程を1 コートへ代替することが可能となり、塗装現場の省工程・省人化に大きく貢献できる。今後は、顧客の多様な意匠ニーズに応えるバリエーションの拡充に加え、本技術 を他の非鉄金属や難付着素材へも展開し、生産効率の向上と高い意匠性を両立する提案を推進していく。
高級感のある意匠として、金属調の高輝度塗装がさまざまな製品に適用されている。高い輝度と深みのある高い光沢感を発現するためには、ベース層で輝度感を、トップ層で光沢感を付与する2 コート以上の塗装が必要であった。「エコネットFX-2」は、従来の2 コート仕様と同等の輝度感および光沢感を1 コートで実現し、塗装工程の短縮による省工程化に貢献する製品である。
近年、金属調塗料の高輝度化への要求に伴い、従来比で極めて薄く平滑な新規アルミ顔料の開発が進められている。この新規アルミ顔料は、理想的に配向すれば粒子感が目立たず、光の散乱も抑えられることで、鏡面に近い意匠が得られる。また、薄いことから従来のアルミ顔料と比較して比表面積が大きく、隠蔽性が高いため、配合量を低減できる。その結果、第2図に示すとおり、光沢低下の要因となる塗膜表層の凹凸を最小限に抑えられ、2 コート仕様のような光沢感を出すことを可能にする。

第2図 アルミ顔料の光沢への影響
一方で、この薄さは塗膜内での挙動が不安定化し、アルミ顔料の配向制御を困難にする要因ともなる。この課題を解決するため、塗着時の固形分を低く設定し、乾燥過程での体積収縮を大きくすると共に、薄膜設計にすることで、物理的に顔料を配向させる設計とした(第3図参照)。
しかし、このような薄膜化は、一般的に薬品等からの保護機能の低下を招く懸念がある。そこで、薄膜でも十分な耐久性を確保できる樹脂設計を行った。Tg が高く、かつ分子量の大きい主樹脂をベースに、耐薬品性が高く体積収縮が大きい副樹脂を併用することで、薄膜でありながら優れた塗膜物性と高意匠の両立を実現した。

第3図 熱乾燥時における塗膜の体積収縮と光輝材の配向
輝度感の評価手法として、60°光沢値とL*値を用いた算出値が人間の目視評価との相関が高いとの報告がある4 )。また、微細な塗膜表面の凹凸の影響を捉えることができる20°光沢値も指標に加え、評価した。 第4図に示すとおり、エコネットFX-2 の輝度感は、従来の1 コートのみならず、2 コート仕様の数値を上回る結果が得られた。また、光沢感においても、目標とする2 コート仕様と同等であることを確認した。

第4図 従来の金属調塗料とエコネットFX-2 の輝度・光沢評価
エコネットFX-2 は、2 コート仕様と同等の輝度感や光沢感を1 コートで実現した製品である。これにより省工程化への寄与が可能となり、家電製品、自動車部品、モバイル機器など、意匠性とコスト競争力が同時に求められる分野への展開が見込まれる。今後も、常に高まる高輝度化への要求に合わせて改良を重ね、より高い意匠性と生産効率の向上を両立する製品を提案していく。
屋外環境にさらされる建築物は紫外線や雨水の影響を受ける一方、風力発電設備では物理的な摩耗・衝撃、下水道施設では腐食性ガスなど、対象となる設備によって晒( さら)される環境や劣化要因は多岐にわたる。そのため、それぞれの環境に応じた保護機能を付与することが、構造物の長寿命化を実現する上で重要となる。
これら課題を解決するために開発した「オリジビルドシリーズ」は、紫外線や雨水に高い耐性を有する高耐候アクリルウレタン塗料「オリジビルド#100 」と、腐食や摩耗、衝撃などの過酷な環境から素材を保護する高耐久ポリウレア塗料「オリジビルドUA」をラインナップしている。
オリジビルドシリーズは、環境ごとに異なる劣化要因に対し、適した保護層を形成することで、メンテナンス頻度の低減により省人化に貢献できる製品である。
一般に塗料に耐候性を付与する場合は、低分子量の耐候剤を配合するが、これらは熱や雨水の影響によりブリードアウトしやすく、経時での性能低下が避けられなかった。この課題を解決するために高耐候タイプのオリジビルド#100 は、耐候劣化防止成分を樹脂骨格中に組み込むことでブリードアウトを抑制し、高い耐候性を長期間保持することを可能にした。これにより、従来は退色の懸念から使用が困難であった鮮やかな色彩の顔料による発色も可能となった。
また、本製品は樹脂設計により幅広い金属素材へ付着適性を有しており、1 コート塗装が可能である点も特長である。この特長と前述した高耐候性により、通常プライマーで隠蔽される素材そのものの色や質感を生かすことができ、第2写真に見られるように幅広い意匠とその長期的な維持を実現している。

第2写真 オリジビルド#100 のカラーバリエーション例
一方、腐食や摩耗、衝撃などの過酷な環境からの保護を目的とした高耐久タイプ「オリジビルドUA」は、強靱( きょうじん)な塗膜を形成するポリウレア樹脂系をベースとした。第2表に示すとおり、一般的なポリウレア塗料は数秒で硬化するため専用の衝突混合ガンが必須であり、その高い反応性から膜厚のコントロールができず施工管理も難しいという課題があった。
本開発品は、硬化反応速度の制御により実用的な可使時間を確保した点が大きな強みである。硬化剤に反応性が穏やかな脂肪族イソシアネートを使用し、主剤には立体障害により反応速度を抑制した特殊アミンを組み合わせることで、硬化速度をコントロールしている。これにより、従来は困難であったエアスプレーや刷毛・ローラーによる施工が、一定の条件下で可能となった。また、一般的なウレタン塗料と比較すれば硬化は速く、常温短時間で強靱( きょうじん)な保護層を形成できるため、省工程化にも寄与する。さらに、硬化剤の選択により硬質や軟質といったさまざまな環境や用途に合わせて、物性を調整で きる設計とした。
第2表 オリジビルドUA と汎用塗料の特性比較

| 汎用ポリウレア塗料 | オリジビルドUA | 汎用アクリルウレタン塗料 | |
|---|---|---|---|
| 樹脂系 | アミン /芳香族イソシアネート |
アミン /脂肪族イソシアネート |
ポリオール /脂肪族イソシアネート |
| 固形分(塗装時) | 100% | 70~100% | 20~60% |
| 反応速度 | 非常に速い/数秒 | 速い/ 5~30 分 | 遅い/数時間 |
| 塗布 | 衝突混合ガン | 刷毛 ローラー 直前混合ガン スプレー |
スプレー |
| 強制乾燥条件 | 常温乾燥(数秒) | 常温乾燥(10~120 分) | 70℃ ×30 分 |
| 標準的な膜厚 | 3~5mm 調整不可 |
0.2~2mm 調整可能 |
0.01~0.05mm 調整可能 |
| 色艶/外観 | △(細かい色調調整困難) /△(凹凸大) |
〇(ソリッド)/〇 | ◎/◎ |
各仕様において、それぞれの過酷な環境を想定した信頼性試験を実施し、その性能を確認した。高耐候タイプ( オリジビルド#100 )の評価では、紫外線に対する耐久性を測るサンシャインウェザーメーター(SWOM)試験を実施した。第5図に示すとおり5,000 時間( 実暴露20 年相当以上)照射後も大幅な光沢 低下等の外観異常はなく、付着性も維持されることを確認した。

第5図 オリジビルド#100 促進耐候性試験結果(※ JIS K5600 7 -7 に準拠)
高耐久タイプ( オリジビルドUA)については、硬質仕様と軟質仕様の塗膜強度評価を行った。第3表に示すとおり、硬質仕様では引っ張り試験での最大応力が高く、軟質仕様では引っ張り試験での破断伸度が高い特長がある。また、物理的な摩耗や衝撃が繰り返される環境を想定した耐久性試験では、軟質仕様が有利であった。これは柔軟な塗膜が高い衝撃吸収能力と耐摩耗性を発揮したためと考える。
第3表 オリジビルドUA の塗膜物性評価

| オリジビルドUA | |||
|---|---|---|---|
| 硬質 | 軟質 | ||
| 樹脂 | 主剤 | アミン | |
| 硬化剤 | HDI ヌレート |
HDI アダクト |
|
| 引っ張り | 最大応力(MPa) | 40 | 20 |
| 破断伸度(%) | 10 | 300 | |
| 押し込み | マルテンス硬さ(N/mm²) | 100 | 30 |
| 耐久性試験 耐摩耗性(mg/kg) ※ |
30 | 0 | |
※ 炭化ケイ素(#36、粒子径425–500μm)を飛び石試験機で試験片(5cm×15cm)に噴射し、炭化ケイ素1kg あたりの塗膜質量の減少を比較。
加えて、腐食性物質による劣化が懸念される環境を想定して、JIS A7502「下水道構造物のコンクリート腐食対策技術」に準拠する試験を実施した。最も厳しいD 種を満足しており(第4表参照)、厳しい腐食環境下においても長期間にわたり構造物を保護できることを確認した。
第4表 オリジビルドUA(硬質仕様)のJIS A7502 -2(塗布型ライニング工法・D 種)評価

| 項目 | 評価 | 条件 | ||
|---|---|---|---|---|
| 耐硫酸性 | 合格 | 10%硫酸×60日浸漬 | ||
| 硫黄侵入深さ | 合格 | 10%硫酸×120 日浸漬、5%かつ100μm 以下 | ||
| 透水性 | 合格 | 0.29MPa×1 時間、透水量が0.15g 以下 | ||
| 接着 安定性 |
標準状態 | 合格 | 1.5N/mm² 以上(標準状態) | |
| 吸湿状態 | 合格 | 水に24 時間浸漬後に塗装、1.2N/mm² 以上(吸湿状態) | ||
| 耐アルカリ性 | 合格 | 水酸化カルシウム飽和水溶液×60日浸漬 | ||
| 有機酸 | 合格 | 5%酢酸水溶液×60日浸漬 | ||
オリジビルドシリーズは、優れた保護性能により、建材やインフラ設備など幅広い分野で使用・検討されている。本シリーズは、構造物を長期間保護し補修頻度を大幅に低減させることで、省工程・省人化に大きく貢献できる。今後も耐候性や耐久性をより改良し、構造物の長寿命化によるメンテナンス業務の省力化に貢献できる製品開発を推進していく。
本稿で紹介したエコネットMG、エコネットFX-2、オリジビルドシリーズは、塗装工程の短縮や塗装品の長寿命化により、省工程・省人化やコスト削減に貢献する製品である。昨今の製造現場では、労働力不足 への対応や作業時間の短縮が実務的な課題となっており、塗料にも単に意匠や性能向上だけでなく工程効率の向上が求められている。
今後は、こうした現場のニーズに応えるべく、仕上がり品質と生産効率の両立を重視した省工程化や、長寿命化によるメンテナンス頻度の低減に伴う省人化に寄与する製品開発を一層進めていく所存である。
執筆:ケミトロニクス事業部 谷島 徹
当記事は『塗装技術』COATING TECHNOLOGY 2026年4月号(コーテック株式会社発刊)に寄稿された論文を、Web閲覧用にレイアウトを一部調整して掲載しています。
《参考文献》