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ワンウェイクラッチ技術とその導入例

ワンウェイクラッチとは

ワンウェイクラッチ(One-way clutch)は、「一方向」を意味する「ワンウェイ」の名の通り、回転する力を一方向にのみ伝達し、逆方向への回転は許さず空転させるという、ユニークな特性を持つ機械要素部品です。別名「フリーホイール」とも呼ばれ、このシンプルな機能によって、産業機械から身近な製品まで、幅広い分野で安全性、効率、そして性能の向上に不可欠な役割を果たしています。

ワンウェイクラッチとは

ワンウェイクラッチの構成

ワンウェイクラッチの主要な部品は、一般的に内輪(インナーレース)や軸(シャフト)、外輪(アウターレース、ガイリン)、転動体(ローラーやスプラグなど)、保持器(ケージ、リテーナーなど)、バネ(スプリング)で構成されます。

ワンウェイクラッチの構成部品例

ワンウェイクラッチの構成部品例

内輪(インナーレース)と外輪(アウターレース)
同軸上に配置され、動力を伝達する側と受ける側になります。

転動体(ローラーやスプラグ)
内輪と外輪の間に配置され、一方向へのトルク伝達(係合)と逆方向へのフリー回転(滑りまたは転動)という、クラッチの主要機能を担う要素です。

保持器(ケージやリテーナー)
転動体(ローラーやスプラグ)を円周上で等間隔に保持し、正しい位置に案内する環状の部品です。転動体同士の接触による摩耗や、不均等なトルク伝達を防ぎます。

バネ(スプリング)
保持器に組み込まれることが多く、転動体を常に内輪と外輪に軽く押し付け(プリロード)、瞬時の係合を可能にするための弾性要素です。

ワンウェイクラッチの原理

動力伝達時(ロック)
動力を伝えたい方向に回転力が加わると、ばねに押されていた転動体が、内輪と外輪の間の最も狭い部分、つまりくさび状の空間に瞬時に押し込まれます。このとき、転動体が両者の間に強く食い込み(噛み合い)、内輪と外輪が一体となって回転します。これがロック状態であり、動力が完全に伝達されます。

空転時(解放)
動力を伝えたい方向とは逆の方向に回転力が加わると、転動体はくさび状の空間の広い側へ移動し、内輪と外輪の間の挟みが解消されます。この状態では、転動体は抵抗なく滑るため、内輪と外輪は独立して回転(空転)し、動力は一切伝達されません。

このように、自転車のペダルを止めてもタイヤが回り続ける「フリーホイール」と同じ原理で「ロック」と「解放」が瞬時に切り替わることでワンウェイクラッチはその機能を果たします。

ワンウェイクラッチの導入例

導入例1
コピー機における紙詰まりの際のメンテナンス性の向上

ワンウェイクラッチの用途 複合機、プリンタ、コピー機(用紙搬送)

コピー機で紙詰まり(ジャム)が発生した際、カバーを開けて詰まった用紙を手で引き出す作業が必要です。用紙を送るローラーを手で逆回転させようとしても、その力がモーターに伝わってしまいます。この抵抗により、用紙をスムーズに引き抜けません。
コピー機に内臓するワンウェイクラッチの主な機能は、特定の方向への動力の伝達を遮断することです。この機能は、特にコピー機内で紙詰まりが発生した際のメンテナンス作業において重要な役割を果たします。

通常、用紙を搬送するローラーはモーターによって駆動されています。紙詰まりが発生した際に詰まった用紙を引き抜こうとすると、ワンウェイクラッチがない場合はローラーの回転がモーターに伝わってしまい、抵抗となって用紙をスムーズに引き抜けません。 ワンウェイクラッチが組み込まれていることで、用紙を引き抜く方向(モーターの駆動方向とは逆の方向)にローラーが回転する際、ローラーからモーターへの動力の伝達が遮断されます。これにより、軽い力でスムーズに詰まった用紙を取り除くことが可能になります。
このように、ワンウェイクラッチはコピー機のメンテナンスにおける作業効率性の向上に大きく貢献しています。
また、コピー機の他にも、複合機やプリンタ、ATMや券売機といった用紙搬送を伴う機器においても同様の貢献をいたします。

導入例2
ペーパータオルディスペンサーの電動と手動の切り替えによる利便性の向上

ワンウェイクラッチの用途 ペーパータオルディスペンサーの電動と手動の切り替えによる利便性の向上

ワンウェイクラッチは、ホテルやレストランなどの化粧室に設置されているペーパータオルディスペンサーのような、身近な製品で活用されています。
この種のペーパータオルディスペンサーには、モーターによる自動送り出しと、手動ハンドルによる送り出しの両方の機能が求められます。ワンウェイクラッチは、この二つの動力の切り替えをシンプルに実現する上で、重要な役割を果たしています。

通常、モーターでペーパーを送り出す際、その動力が手動ハンドル側にも伝わってしまい、ハンドルが意図せず一緒に回転してしまいます。
ワンウェイクラッチが組み込まれていることで、モーターからの出力が手動ハンドル側に伝わるのを遮断できます。これにより、モーター作動中にハンドルが回転するのを防ぎます。また、手動でペーパーを送り出す際にも、ワンウェイクラッチがハンドル側からモーターへの動力伝達を遮断するため、ハンドルをスムーズに回転させることが可能になります。
このように、ワンウェイクラッチ一つで、電動と手動の連動と切り替えを簡単に実現し、製品の利便性を高めているのです。

その他の導入例

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