
V2V(Vehicle to Vehicle)
エレクトロニクス事業では、小型・高効率、高信頼、長寿命が求められる通信用電源開発で培った技術をベースに、この10 年ほどは蓄電池の充放電が1 台で可能な双方向DC/DC コンバータ技術の研究開発に力を入れてきました。再生可能エネルギーの普及に伴い、電力網や電力システムに蓄電池が取り込まれることを見据えたものです。広い入出力電圧範囲で動作可能なワイドレンジ対応の技術、広い負荷範囲で高い変換効率を維持する技術などを確立しております。
双方向DC/DC コンバータの応用先のひとつに「移動する蓄電池」とも言える電気自動車(EV)があります。EV では、ガソリン車のガス欠にあたる電欠への対応が課題の一つです。この電欠対策に、当社の双方向DC/DC コンバータ技術を活用することを考え、EV からEV への充放電を可能とする可搬型充放電システムPOCHA を開発しました。電欠現場に駆け付けたロードサービスEV から「電気のお裾分け」が可能です。電欠車を急速充電器のある場所までレッカー移動する従来の電欠対応に比べ、ロードサービスの時間と労力を大幅に削減します。POCHA はCHAdeMO 認証を取得しており、国内外の自動車メーカのEV との接続確認を実施しております。また、雨天での電欠車充電にも対応できるように、保護等級IP44 を取得しております。
双方向DC/DC コンバータ技術活用のさらなる将来展望として、商用電源と再生可能エネルギー、定置蓄電池やEV などを直流BUS に接続する蓄電システムの構築を目指します。商用電力のピークシフトや再生可能エネルギーの地産地消を可能にするシステムです。停電時には太陽電池や蓄電池などの複数電源を活用でき、また効率的に電力融通を行えるのでCO2 削減にも有効で、カーボンニュートラルにも貢献できると考えます。
V2V(Vehicle to Vehicle)
B2V(Battery to Vehicle)
コンポーネント事業では、紙送り機構の回転制御部品であるトルクリミッタやワンウェイクラッチなどの精密機構部品を開発・製品化してきました。これら製品のうちトルクリミッタは、複写機やプリンタといったOA 機器や金融関係のATM などにおいて、紙が2 枚重なって送られる重送を防止する機能として幅広く活用されております。しかしながら、近年のペーパーレス化やキャッシュレス化の潮流により、これらの市場は縮小することが予想され、過去の実績にとらわれない新市場開拓が必要と考えております。
100 年に1 度の変革期と言われる自動車などのモビリティー分野では、動力の電動化に伴って車内外のユーティリティーにも電動機構が多く用いられるようになっております。車内のコンソールボックス、電動シート、アームレスト等に用いる精密機構部品の需要に加え、SUV の電動バックドアの動作安定化や安全機構として、トルクリミッタが採用されるケースが増えております。
モビリティー分野向けの製品には、これまでのOA 機器向けなどと比較して極めて高い性能や品質が要求されます。お客様の要求仕様を満たすため、新たな機構や高性能材料の適用が必要になる場合もあります。これまでの製品開発で培ったトライボロジー技術と生産技術とを駆使し、新たな次元の性能と品質を持つ製品の開発を進めています。新市場向けに高い性能と品質を追求する一方、生産自動機の導入による生産効率化にも同時に取組んでおり、既存市場のOA 機器向けなども含め、品質安定化と生産性向上を進めております。
今後のモビリティー分野での用途拡大に加え、医療やホビー分野などへのさらなる市場拡大を目指す開発戦略として、二つの取り組みを始めています。一つ目はコア技術である摩擦・摺動特性に関する知見を深める「トライボロジーの探求」です。摺動部のグリースレス化や軽量高強度材料の活用を目指します。もう一つは既存の機構部品とセンサー・アクチュエータ等をユニット化し、製品に新しい価値を付与する「複合化ユニットの開発」です。これらの戦略を通じて、製品の環境負荷低減や価格競争力の向上および付加価値の向上を実現していきます。
メカトロニクス事業では、還元剤としてギ酸を用いるギ酸還元真空リフロー炉を開発してきました。還元剤はハンダ付けで重要となる金属表面酸化膜の除去に使われ、ギ酸還元では従来の水素還元と比較して低温での還元が可能になります。さらに、ギ酸還元に真空を組合せることでボイドの発生を抑制でき、歩留りも高められるため、高品質なハンダ付けと高い生産性が実現できます。また、ギ酸還元によるハンダ付けではフラックスを使用しないため、ハンダ付け後のフラックス洗浄は不要となり、お客様の生産ラインから洗浄工程を削減できる大きなメリットもあります。
再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の社会実装が進み、パワーエレクトロニクスの高度化が求められており、パワーエレクトロニクスにおけるキーパーツである高性能・高信頼のパワー半導体デバイス・モジュールの需要伸長が見込まれています。パワー半導体製造におけるハンダ付け工程に最適な当社のギ酸還元真空リフロー炉は、特に海外で多数のお客様にご購入いただき、好評をいただいております。パワー半導体の量産性向上に着目し、タクトタイムの短縮や搬送機構のインライン対応を狙って、多数のチャンバーを搭載可能な「MPX シリーズ」をラインナップに加えました。治具を含めたプロセス提案も行うなど、お客様と一体となり課題解決に取組んでおります。パワー半導体以外では、ハンダバンプの狭ピッチ化など微細化・高付加価値化が進む半導体工程において洗浄によるフラックス除去が困難となりつつあることから、フラックスレスのハンダ付けの有効性が高まっております。
現在、車載用をはじめとする特に高い品質が求められる用途に向け、ハンダの濡れ具合やボイド率の管理ならびに製品の合否判定を行うX 線検査システムを装置内に組み込んだ製品を開発中です。また、さらなる微細化、実装高密度化が求められているIC パッケージや積層LSI 市場の要求に応えるため、チャンバー構造と制御方法をウエハプロセス用に最適化した「MPW シリーズ」や、ガラス基板に対応する「MPP シリーズ」を開発し、市場投入することを計画しています。製品の可用性や利便性をさらに向上させ、国内外を問わずギ酸還元方式の優位性が認知されるよう、さらなる開発を推進してまいります。
ギ酸還元真空リフロー炉「MPX3」外観写真
ギ酸還元真空リフロー炉「MPX」X 線検査装置接続例
ギ酸還元真空リフロー炉「MPW」製品構想
ケミトロニクス事業の主力製品は、プラスチック基材用の「塗料」と「コーティング剤」で、自動車内外装部品や家電製品などに広く使用されております。様々な仕様の塗料やコーティング剤は、コア技術である「ポリマー設計技術」( 基材への高い付着性保持)、「カラーデザイン技術」( 高意匠性付与)、「レオロジーコントロール技術」( 塗装作業性向上) を活かして開発されています。また、当社製品の大きな特長は、用途と使用条件別にカスタマイズが可能なことです。これまでに蓄積してきた膨大な基材や原材料の情報、評価試験データなどを土台とし、それぞれのお客様が望む性能、意匠、塗装工法に最適な製品を提供することができます。
スプレー塗装やローラー塗装などの従来方法に代わる画期的な加飾方法が現在実用化されつつあります。これに対応するため、既存の製品仕様とは大きく異なる仕様の製品開発が必要になってきています。これまで経験のない未知の要求仕様でも、3 つのコア技術と知識をフル活用して、開発に挑戦しています。
近年、塗料の製造や使用過程で生じる環境負荷に目が向けられるようになり、環境負荷の低減が課題となっています。当社も、2005 年から主として溶剤対策による低VOC、特定VOC レスなどの環境配慮型製品を上市し、様々な産業分野でご採用いただいてきました。さらに最近では、カーボンニュートラル達成への貢献も強く意識し、非石油由来、省電力、工程短縮をキーワードとして、Reduce 型製品の開発に注力しております。このReduce 型製品に加えて、さらにReuse、Recycleを実現できる3R 製品の開発、再生可能エネルギー用材料の開発にも今後着手する計画です。当社製品を採用されるお客様がサスティナビリティへの貢献を実感していただけることを目指し、製品開発を進めて参ります。